本物に接すると

はりぼて、付け焼刃、フェイク、その場しのぎ、偽物、僕らの周りはそんなようなもので溢れている。
でも初めから常に、そんなようなもの達に囲まれていた訳で、それを本物であると、もしかしたら思い込んでいる。
「本物に触れてみましょう、心が豊かになります」と提案されつつ、これが本物ですと提示されたところで、それもまたどうなのか、相変わらずそれは、フェイクに本物らしさという装飾を施しただけのものなのかもしれないし。
やはり本物というのは、自分自身で見出すしかない。
本物、すれ違いざまに感覚する一瞬の異質感、それはそうですよね、フェイクに慣れ親しんだ僕らはそのフェイクを本物であると思い込んでいるのですから、本当の本物に出会った時に感じるのは、他のものとは違うように何となく感じるという、異質感。
それを感覚するには、飼い慣らされる事を拒絶し、自分の頭でものを考えなくてはいけないのかもしれないですけれど、あとは注意深さも大切になるのか。
本当の本物に出会えた時、自分の世界は一変するのでしょう、今まで接してきた多くのものが色あせる、そして本物だけがアウラを発し、美しい色彩を纏って浮上する、前景化する。
今まで本物だと考え違いをしていたフェイクに対する落胆と引き換えに、それは極端に言えば今まで自分が経験してきた事に対する落胆と引き換えにという事なのかもしれませんが、その落胆と引き換えに豊かさが、本物に接する事が出来るという心の豊かさが、喜びが、誇りが、ここで初めて実感できる。
本物に出会えた時、そこで得られる経験を通して自分も本物に近づける可能性もあるのかもしれません。