神奈川県藤沢市城南 東海道線沿線のカウンセリングルーム。辻堂駅より国道一号線方面へ徒歩12分。10:30~21:00、年中無休。


鏡の季節

2018年07月19日 10:11

郷愁に満ちた薄紅色の透過の中に満ち溢れるヒグラシの奏に呼び起される鏡の季節。
今となってはそれが現実に自分の身に起きた事だったのかどうか定かではない、手繰り寄せる事すらままならない記憶とは言えないような淡い観念の、そっと掌で包み込まない事には全てが無かった事として消滅しかねないような危うさに焦燥を抱き耐え続けながら。
あの時、自分となったものは、今どこに居るのだろうか。
あの時想いを馳せたかもしれない場所に、自分は今近づく事が出来ているのだろうか。
標の無い、道とはとても言えないような浮遊、誰に出会う事もない漂い流れゆく雲の狭間を、なんの頼りも持たないままに、ただ自分は流浪しているだけなのか、彷徨い続けているだけなのか。
どこに居るのかさえ分からない、焦点の定まらない瞳孔を見開き、あの時、鏡の前に歓喜と共に力強く立っていた自分を探し出し、激しく問い詰めたくなるような衝動。
鏡の季節、芽生え始めた自我を戸惑いや喜びを胸に抱きながら流し込んだ鏡像、あの時、想像の世界の住人になる事を選択した自分は、今どこに居るのでしょうか、自分の中のどこか片隅で、ひっそりと孤独に耐えながら膝を抱えているでしょうか。

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