30.媚びない人

なんか、いつも同じようなタイプの人に引き寄せられてしまうというか、結構そういう事があるんですけど・・・。
３０歳位の頃、車（中古車）を買おうとしたときに、足代わりでちゃんと動けば何でもよかったんで、手ごろな値段の一台に目をつけ、中古車屋さんの社長と話している時に、僕「足代わりなんで、壊れなきゃ何でもいいかなと思って」と言ったところ、社長「何言ってんスか、車は機械ですよ、壊れない機械なんてあるわけないでしょ、でも万全の状態にちゃんと整備はしてお渡ししますけどね」と、ひょうひょうとした様子。
なんか衝撃的な一言に感じて、いやいやごもっともという事で、すごく信用できそうな気がして、その日に買うつもりじゃなかったんですけど、その場で即決したという事があります。
なんか、客としての僕に媚びることなく、当たり前の事を、当たり前にしゃべってるのが、すごくかっこよく感じて、なんかその社長を気に入ってしまって、その後も２台（計３台）の車をそこで買う事になるんですけど。
あともう一つ、やっぱり３０歳位の頃、地方の温泉旅館に泊まりに行ったんですけど、そこはスキー場も近く、ちょうどオフシーズンの平日だったんで、僕たち以外にはお客さんは一組もいなくて、作務衣を着たご主人が、一人で料理を作って、僕たちの食卓まで運んでくれてたんですけど、どこにでもある旅館の夕食という感じだったにも関わらず、なぜか出てくる料理、一品一品がすごくおいしくて、特に野菜のてんぷらの中にあった、何の葉っぱかわからない葉っぱのてんぷらが、すごくおいしくて「この葉っぱのてんぷらおいしいですね、なんの葉っぱですか？」と聞いたところ、ご主人が、これまたこの方もひょうひょうと「ほら、そこの軒下に生えてる雑草だよ、うまいでしょ」と当然の様な顔をして・・・と。
ご主人はこう言ってもよかったと思うんです「うちの裏山に生えている〇〇という植物の葉っぱで、あんまり都会の人には馴染みがないかもしれないけど、結構いけるでしょ、さっき山登って取って来たんですよ」
この恩着せがましさや、無用なサービス精神を振り切って、「うまいものはうまいんだよ」という物言いが、すごく気に入って、この人かっこいいなと思って、やっぱりその後も、何回も泊まりに行くことになるんですけど。
こういう、当たり前の事を、媚びずに当たり前に口にできて、それでいて違和感のない人って、かっこいいなって、当時思いました。